東大野球部の改革に学ぶ


一般的な改革

経営を続けていますと、経営の改革に取り組む必要が出てきます。経営の改革は「収支の改善や生産性の向上」などを目標に行われます。その手法は「人件費の削減や不採算部門の閉鎖」などです。
この改革の方法に共通していることは「カットする」という考え方です。特に、収支の改善には、人件費を抑制するために、人員の整理に及ぶことも珍しいものではありません。このような改革の考え方は、いわゆる小泉改革に始まり、今の日本を覆っています。
しかし、このような改革を進めていけば、その先にあるのは「先細りの経営」でしかないのではないでしょうか。改革とは目先のコストの削減ではなく、その目的は「経営規模の拡大あるいは経営体質の改善」にあるはずです。このような発想による改革こそ社会の発展につながり、日本経済の進展にもつながるのではないでしょうか。つまり、改革のためにカットするのではなく、「加える改革」が求められるのではないでしょうか。その加える改革の実践を「東大野球部の改革」に見ることが出来ます。

東大野球部の改革

東大の野球部は創部97年の歴史を持ちながら、東京6大学のリーグ戦で万年最下位のチームです。ファンの言葉では「40年、勝ったのを見たことがない」との声も聴かれます。

この東大野球部が、勝つためにさまざまな改革に取り組んでいます。元ジャイアンツの桑田真澄投手をコーチに招いたこともその一つだったのでしょう。
東大野球部は、他の東京6大学のチームと異なり、推薦入学の方法により、甲子園出場経験を持った選手を確保することが出来ません。東大野球部の選手は、全員、大学入試の最難関と言われている「一般入試」経て入部してくるのです。このため、他の大学と同じことをやっていたのでは、勝つことは不可能です。

東大野球部は、勝つためにどのような改革を行ったのでしょうか。
まず行ったことは、「負け癖を取る」ことから始めました。選手は、他大学の野球経験の豊富な選手をみて、初めから「勝てない」と思っていたようです。相手が先に先制点を挙げると「自分たちに逆転は無理」、東大が先に先制点を挙げた場合でも「逆転されて負けるのでは」などいわゆるマイナスの発想がありました。野球部のコーチは、この意識を払しょくすることから始めました。

意識の改革だけでなく、有力選手の獲得の方法も改革しました。
その方法とは、全国の高校野球の選手たちの中から人を集め、彼らに東大に入学できるように受験勉強の指導を行い、野球経験のある学生を確保するものです。この高校球児たちの偏差値は、全国の大学受験生平均値のレベルであって、決して勉強が特別できる生徒ではありません。彼らの指導には、野球部の選手が当たりました。彼らは合宿まで行い、学力の向上を指導しました。その結果、8名程度の選手が入試を突破したようです。
入試を突破した選手たちは、入学後、他の大学では必要とされない「体を大きくすること」や「野球の基本技術の習得」に励むのです。他の大学野球部の選手は、すでに高校球児の段階で身に着けているものばかりでした。

改革の成果

これらの改革に取り組みながら、2016年の東京六大学リーグ戦に臨みました。

その結果、東大が勝利した試合は以下の通りです。

春季リーグ戦   4月18日 3ー2(明治)
5月 7日 4ー0(立教)
5月21日 4ー1(法政)

秋季リーグ戦  10月 8日 4ー1(立教)

この東大野球部の改革を見ていますと、そこには改革の従来のイメージである「削減する」という発想から「何かを加えて改革する」という発想ではないでしょうか。

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